ご存じでしょうか。
「傍楽」という貼り紙を。
店内では、販売用のコーヒー豆の上あたり、ほぼスタッフにしか見えない位置に貼ってあります。
今から約10年前。
まだ自分が東京駅の喫茶店で働いていた頃、モーニングの常連さんの中に、日本橋「天扶良 だぼ鯊(てんぷら だぼはぜ)」の大将がいらっしゃいました。
お店に伺ったことがあるのですが、目の前で揚げてくれるサクサクの天ぷらは格別で、とても美味しかったことを覚えています。
独立することを話した時も喜んでくれ、「君なら大丈夫」と言って背中を押してくれました。
「商(あきな)いとは、飽きずに続けること」
その言葉は、今も心に残っています。
大将もご高齢になり、4年ほど前にお店を閉められました。
最後にあいさつに伺った時に、この「傍楽」と書かれた貼り紙をいただいたのです。
「傍楽」と書いて「働く」
傍(かたわら)の人を楽にし、楽しませる
新聞記者の方が、だぼはぜの大将が働く姿を見て、造語として贈られた言葉だそうです。
お店に来たお客さんを楽しませ、一緒に働く仲間を楽にし、動くこと。
ただの労働ではなく、「傍楽」。
だぼはぜの大将も、お客さんから見える場所ではなく、自分が見える場所に掲げて働いていました。
その想いを受け継ぎたいと思い、お願いして貼り紙をいただきました。
その貼り紙に込められた想いが、今も自分の原点になっています。