期間限定で販売している「エチオピア シダモG1 シャキッソ アナエロビック ナチュラル」。
長い名前ですね。
期間限定のコーヒー豆は長い商品名になってしまいがちなので、店頭でも呪文のようだ、と言われたこともあります。
簡単に説明すると、エチオピア=国名、シダモ シャキッソ=地域名、アナエロビック=発酵方法、ナチュラル=精選処理方法となります。
今回の記事は「アナエロビック=発酵方法」について深堀りしたいと思います。
今、コーヒーの生産地では、この発酵が一大ブームとなっていて、有名農園のほとんどが、その手法を取り入れているようです。
NAGI COFFEEでも2年前からアナエロビックで発酵させたコーヒー豆を仕入れる事が出来るようになりました。
アナエロビック、カーボニックマセレーション、エアロビック、ラクティック。
これらの名称は全て、コーヒーの精製過程において発酵を意図しておこすものを指しています。
これまでのコーヒー農園側の品質における流れ
従来決められていたコーヒーの規格とは違う、欠点チェックではないカッピングの導入が、スペシャルティ、つまり品質重視の考え方を定着させ、2004年のベストオブパナマでは、「ゲイシャ」という品種への注目と、「品種によってここまで味が変わるのか」という驚き、またそれに取り組むべき意味を生産者にもたらしました。
そしてここ数年、精製(生産処理、またはプロセスも同義)が、味に画期的な影響を与えることが、「発酵」により高い注目を浴びているのです。
ではコーヒーにおける発酵とは、コーヒーの中で何がおこっているのでしょうか。
発酵とは、微生物や酵母などが、糖分などの物質を分解し、今までそこに存在しなかった物質を作り出すことです。
存在しなかった物質とは、アルコールや香気成分のことで、この香気成分をコーヒーにもたらすために、生産者は発酵プロセスをおこなうのです。
発酵の身近でわかりやすい事例はワインで、ワインの中にある微生物が、ぶどうの糖分を食べて分解し、炭酸ガスやアルコール、そしてあの独特の香気成分を出します。
ビール、日本酒なども、それぞれこのアルコール発酵を利用して、製造しています。
日本では発酵食品が大変多く、納豆や味噌なども、この発酵の原理を利用して作られたものです。
コーヒーにおける発酵も、この作用を利用しています。
コーヒーは200度以上の温度で焙煎したものを挽いて抽出するので発酵によってアルコールが発生しても抽出されたコーヒーの中には残りません。
ただし、発酵によって得た一部の香気成分だけが残るため、これを香りや味として感じさせるのが、コーヒーの発酵プロセスとなります。
コーヒーにおける様々な発酵の種類・方法
代表的ないくつかの発酵について。
その呼び名は産地ごと、農園ごとにオリジナルの名称をつけていることも多いようです。
アナエロビック(嫌気性)、エアロビック(好気性)
アナエロビックは密閉したタンクにチェリーを詰めて、嫌気状態(けんきじょうたい)にする発酵の手法です。
嫌気状態とは、酸素が全く存在しないか、非常に少ない状態のことをいいます。
こちらが、NAGI COFFEEで販売している「エチオピア シダモG1 シャキッソ アナエロビック ナチュラル」の発酵方法です。
これに二酸化炭素を加えるとカーボニックマセレーション(次で紹介)になります。
好気性エアロビックはその逆で、空気にさらすことで活発になる微生物で発酵させるというものです。
カーボニックマセレーション
密閉したタンクにチェリーを詰めて、二酸化炭素を充満させ、嫌気状態(酸素がない)にして、特定の微生物の活動を活発にすることで、それらの微生物によって生み出された香気成分をコーヒーに付加するものです。
もともとはワインのボジョレヌーボーで使われた手法で、広く様々産地で行われています。
ラクティック
本来はワインにおいて酸味をおさえるためにリンゴ酸と乳酸菌をタンクに投入し、酸味の強さをおさえつつ、まろやかな味わいに仕上げる方法。これをコーヒーに応用して乳酸発酵させています。
コロンビアやパナマなどで実際におこなわれています。
イースト
イースト菌を使って発酵を促す製法です。
パンを発酵させるために使う、あのイースト菌で、普通に販売されているものを使用するケースもあります。
微生物という生産農家だけでは認識/管理しにくいものと違って、市販されているものを使用するため、再現性などの観点からは扱いやすくなっています。
イーストの購入しやすさや、管理のしやすさから、広く様々な産地でおこなわれています。
モスト
モストとは発酵プロセス過程で作られた絞り汁を使う手法のこと。
カーボニックマセレーションや、アナエロビック等をおこなうとコーヒーの粘液質や果肉が溶け出して、赤いジュースのようなものが排出され、これをモストと呼びます。
このモストを次の発酵タンクに充填し、収穫後の新しいチェリーを入れて発酵させるという手法です。
発酵後のモストは、既に発酵を終え微生物などが活発であると予想されるため、これを使用すると、品質の安定と時間的短縮が図れるというものです。
中南米の多くの産地でおこなわれています。
そんなコーヒーにおける発酵ですが、もはやWBC(ワールドバリスタチャンピオンシップ)や、WBrC(ブリューワーズカップ)では、上位入賞者のほとんどが発酵のコーヒーを使用しており、発酵なくして競技会は語れないのではないか、と思うほどのブームになっています。
今、発酵以外にも生豆をウイスキーの樽に浸したり、桃のジュースに浸したりと、さまざまな方法でコーヒーの味わいの世界が広がっています。
これからも、さまざまなコーヒーを楽しんでいこうと思います。